夢:第一話「朝は始まり」

幼い時、少年は何かを見つけた。眠りから覚め、体を起こすとそれがあった。
眼前にあるは丸い球体。宙に浮かぶ光る球体。不規則に回転する光り輝く丸い球体。
まだ真っ暗な部屋の中、ひとつ不自然に存在する小さなそれは異様な存在を放っていた。
ぼんやりと少年は右手を伸ばす。手は球体に触れることはなかった。
触れる直前に霧散し消えていった。
少年は何事もなかったように横になり、再び眠りに落ちた。

 


 

朝、いつものように少年は目が覚めた。
枕元から少し離れた机の上にあるめざまし時計がジリリリと鳴っている。
時計の針は6時30分を指していた。

「ふぁ〜あ…」

大きくあくびをして起きあがると、ベッドから降りて時計のベルを止める。
目立つ寝癖がついた頭をボリボリかいた後、軽く体をひねって体をほぐす。
その後、机の脇にあるパソコンの電源を入れて椅子に座る。
OSの起動が終わるまでの間、ディスプレイの隣に置いてある小さな鏡を見て自分の顔を見る。
(よし、今日も健康的な顔だな…あ、寝癖だ。直すの面倒くさいなぁ。)
などと考えつつ、起動したパソコンでメーラーを立ち上げメールチェック。

<<新しいメールはありません>>

「今朝は無しか。」
独り言をつぶやいて席を立つ。
昨夜読みかけだった本にしおりを挟み、本棚にしまってから部屋を出る。
パソコンの電源は入れたままだ。

少年は階段を下りて台所へ。

「あ、光純(みつよし)おはよう。」
「おはよう、お母さん。」
母親はちょうどテーブルの上に朝食を並べ終えたところだ。
そしてエプロンをはずして椅子に座る。
目玉焼きと野菜サラダ、そしてトーストがとてもおいしそうに並んでいる。
「お父さんは?」
少年も続いて座った。
「今朝も早く会社に行ったわよ。」
「最近はいつもそうだねぇ。」
言いながら少年はトーストを手に取った。
「んじゃ、いただきまーす。」
「はいどうぞ。」
そして母親も続いて朝食へ。

この髪の毛がまだ乱れている少年、赤桐光純(あかぎり みつよし)は現在市内の高校に通う二年生。
下に同じ高校に通う高校一年生の妹をもつ長男である。
少年の容姿について述べるなら、全て普通といったところか。
目立って背が高いわけでもなく、顔が特別いいわけでもない。見た目はどこにでもいる高校生だ。
だが妹の目には格好良く見えるようで、いつも友達に自慢している。
そのせいなのか、時々彼の知らない女子生徒に陰からコソコソ見られていることがある。
少年は気にしていないように振る舞っているが…毎朝鏡を見るようになったのはなんでかな。

いつの間にやら二人とも朝食を食べ終えていた。
少年が冷たいウーロン茶を飲みながら目線を居間に向けると、テレビで朝のニュースをやっていた。
どこかの学校の校庭から、異質な鏡が突き出ているのが見つかったらしい。それもかなりの大きさだ。
ここ最近こんな感じのことが立て続けに起こっているらしく、どこもこの手の話題で持ちきり。
テレビにラジオ、新聞でも連日のように報道されていてる。
「どうなってるのかしらねぇ。」
「別にいいんじゃないの、戦争の話題なんかよりも平和でさ。」
「そうねぇ。そういえば冷蔵庫にヤクルト入ってたわよ、飲む?」
「んー、飲む。」

場所は変わってニュース報道されていた現場

「いやーしかし、なんだってんだろうな、これ。」
ヘルメットをかぶった作業服姿の男性が、たばこを吸いながら問題の鏡を見てつぶやいた。
「まったくだ。わけわかんねぇもんが次から次へと出てきやがる。」
もうひとり、同じくヘルメットで作業服の男性が無精髭を触りながら答えた。
「「うーん…」」
そして目の前にそびえ立つ高さ7メートルはあろうかという巨大な鏡を見上げ、二人の男性は腕組みをした。
彼らを含めて、十数名の作業服姿をした男性達はこの異常な物体を掘り起こし回収するために集められている。
傷を付けずにとある研究施設へ運ぶようにと依頼されただけで詳しい内容は聞かされていない。
他には、いかにも研究員か学者ですと言わんばかりの白衣を着た人たちがいろいろな機械を操作している。
年代測定やら物質構造の解析、出現した場所の地理的情報等々様々な情報を集めていた。
この鏡と思われる異常なものは、楕円の形をしており、縁の部分には装飾が施されていた。
発見された時と同様、大体3分の1くらいがまだ埋まっている状態で地面に斜めに刺さっている。
校庭に現れた謎の鏡は、太陽の光を反射して美しく輝いていた。

「このように現場周辺では、関係者以外立ち入りできないよう厳重な警備がなされています。
今回の件も、今までと同じく突如と出現したものであり、現在も専門家が調査をしている模様です。
いったいあの鏡のようなものは何なのか、何が起ころうとしているのか、謎は深まるばかりです。」

今朝のスクープ映像を流そうと、たくさんの取材陣が現場リポートをしている。
テレビ局のヘリコプターも2機ほど上空を旋回していた。

学校の敷地の周りは軽装備の自衛隊と思われる人によって囲まれている状態。
そして学校周辺は報道関係の人々でいっぱい、さらに野次馬もかなりの数が集まってきている。
部活のために朝早く学校へ来た生徒は敷地内に入れず周りをうろうろ。
ちょうどその時、「本日は特別休校とする」と書かれた張り紙が校門の前に張られた。
場所が学校の校庭であったので、調査やその他もろもろのために今日だけ休みになるそうだ。
こんなことになってしまい、学校側も対応に追われて大変な様子。
でも本日中に大きな鏡状の物体は回収されるそうなので、明日以降はいつも通りに戻るだろう。

場所は戻って少年宅

居間のテレビ画面ではスタジオと現場リポーターとの間でやりとりがされている。
現場の様子やこれまでと今回との違いを図解などで示しながら盛り上がっていた。
事件が起きたときに放送する一般的なパターンだ。
ちなみに例の現場は少年が通っている学校ではない。
そのため本日は普通に授業がある。
現在時刻は7時20分。
少年は歯磨きをしている。寝癖は直し済みだ。
ちょうどその時、少年の部屋にあるパソコンに変化があった。
画面にはメッセージが表示されている。

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From : 琢也
Subject : 例の件
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琢也だ。

今朝のニュースはもう見たか?

今回のあれが「本体」である可能性が高い。

また連絡する。

以上

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少年宛のメールのようだが意味が分からない。


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